上方娘の世界
「江戸雑俳 上方娘の世界」 鈴木勝忠 著 

古本屋で何気なく見つけ、中をぱらぱらと眺め、、
すぐに買ってしまったものです。

この本を読んでいて、新しく知ったことが多々ありましたので、
少し紹介したいと思います。

庶民の生活や、庶民から見た社会など、
生活の様子が伺えるものになっています。

目次も面白く、
女の子・娘の子・恋・結婚・仕事・色商いと分けられており、
また、それぞれに細かい目次があり年齢毎の娘や親の気持ちが詠まれています。

今回は「女の子」のうちの「誕生と処遇」から紹介です。
以下の句と解説は本文から抜粋させていただきます。

乳を呑で居る尼も有上つ方
『上つ方(うえつかた)』は皇族また貴族。
  女児は産まれると同時に尼門跡などに下されるのであり、

大名の娘にて尼で産み
この句も大名家。これも家には必要ないので産まれたときから尼となる運命だの意。
庶民から見れば、産まれた途端に独身と決められるのは
あまりにあわれだ、というのである。

あぶないあぶない・乳母が手そへる給仕盆

娘らしく躾けるため、まだ幼いころから茶を運ばせる。
足取りも覚束ないので、母や乳母が付き添い、
体の揺れるたびに支えようと手を広げついには見かねて手を出してしまう。 

お辞儀お辞儀と母の出つかい

 『出遣い(でつかい)』とは人形浄瑠璃の黒子が姿を客に見せる遣い方。
これも付き添った母が次の間から指図するのには頼りなくて、
横に居て一々指導する様。

最初の二つは庶民から見たら信じられないことですし、
でも、実際に行われていたことですね。

最近は女性が強い、、なんて言われていますし、
私にもピンと来ないものです。

あとの二つ。
これは本当に微笑ましい光景が目に浮かびます。

私の子供時代はお茶を出すなんてとんでもない!!

「ちゃんと挨拶をしなさい」、、、とは言われたものの、

「お客様なんだから静かに向こうにいてよ!」

なんていわれた記憶があります(笑)

今考えたら、形は違えど、

「お茶を出して顔を見せ、おもてなしの一つを担う」

というのは、私が言われていたことと同じなのかもしれませんね。

「顔を見せ、きちんとご挨拶。おもてなしとして静かにしている、、」

家には居ないで外で駆け回り、やんちゃな男の子のようだった私。
日本的習慣もほとんど知らず、お茶を出す、、
という習慣も経験なく、娘時代を過ごしました。

お茶を出す

只それだけなのに、邦楽を始めた当時は、
戸惑ったことも、以外と知らないことも沢山。

そんな私にぴったりの句がありました。

 二才の巴人人形首ぬく
娘らしく育って欲しいのは親心。
 でも、中には男児に負けない荒い気性の子もいる。
人形を愛でる気はさらさらなく、首を引き抜いてしまう。
それはまさに『勇婦巴御前の組み打ちの図』で、末が心配。

でももし、自分の娘がこんな事をしたら、
やっぱり微笑んでしまいますね。。

2 thoughts on “いとあはれなり、、句の世界  「江戸雑俳 上方娘の世界」 鈴木勝忠 著

  1. るいさん、お若いのに渋い和事がお好きですね。
    私、技能五輪で国際交流の部でお三味線を弾きました。
    外人の方は特にお琴に興味を示しました。お琴は「さくら、さくら」ならすぐひけますが、三味線はそうはいきませんね。

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