先日、国立劇場で行われた
吉村輝章さんの『舞の季(まいのとき)』
踊り「ニ演目」のみという贅沢な会でした。
地歌 珠取海士
義太夫 しゃべり山姥
という演目でした。
「珠取海士」は、二度目の気がしますが、
やはり、今回のものは前回よりも良かったです。
「しゃべり山姥」は初めて拝見しました。
人形振りが随所に織り込まれているもので、あっという間に終わってしまいました。
今回の題名になっている
「本行物」と「丸本物」
何となく分かっている気でいましたが、
改めて、調べてみました。
上方舞にはなじみが多い言葉のようですね。
輝章さんからのご案内の中にはこうありました。
「珠取海士」は母性愛を描いた「本行物」で、
「しゃべり山姥」は文楽から来ました「丸本物」でございます。
この説明を読めば、何となくお分かりかと思います。
ただ、ご一緒した方に「この二つの意味は??」と聞かれ、
何となく、、、しかお話できず、辞書を開きました。
私はこんな時『江戸語大辞典』を開くのですが、
ネットにも多くの説明がありました。
簡単にまとめてみました。
「本行物」(ほんぎょうもの)
「本行物(能採物)」、題材を能や狂言から移入したもの、
格調の高く重厚なもの
「丸本物」(まるほんもの)
人形浄瑠璃で演じられた作品を歌舞伎に移入したもの
義太夫節の本で、一部分を抜粋した抜き本などに対し、
1曲全部を1冊に収めた版本。院本。
「珠取海士」は、何度見ても、胸を切り取るところは目に焼きつきます。
「一つの利剣をぬきもって」も台詞も印象的です。
「しゃべり山姥」は、本当に随所に面白い振りがくみこまれていて、
とても新鮮でした。
また、義太夫の語りが、とても面白く、義太夫を久しぶりに堪能することが出来ました。
最後に今回の踊りの解説を、会のパンフレットから引用して載せておきます。
「珠取海士」
能の「海士」の玉の段に取材した本行物で、子供の出世の為に命を捨てる母の物語。
竜宮に盗られた珠を奪い返す為、都の大臣(大職冠)が賤しい海女と契り、
海中に潜って珠を取らせ、かわりに子供を大臣にまで出世させようという奇譚(きたん) で、吉村流では母物として母性愛を中心に描かれている。
「しゃべり山姥」
近松門左衛門の「嫗(こもち)山姥」の二段目、「八重桐廓話」を地歌舞に移したもの。
吉村流には丸本っものの人形振りが古くから伝わっている。
四段目がいわゆる「山廻り」の段にあたる源頼光、坂田金時らの出世話に
八重桐のやつし芸を絡ませた複雑なストーリー。
舞では、今は訳あって離別している八重桐の夫、坂田時行を廓に勤めていた頃に
小田巻と取り合う立ち回りが語られるうち、招き入れられた岩倉大納言邸で
時行が切腹し、その魂が八重桐の口から入り、山姥と変じていくさまが舞われる。