私が生まれるよりも前に発売されていた
「江戸小話傑作集 田辺貞之助 著」
が、ひょいと出てきました。
武士にまつわるものがありましたので、紹介したいと思います。
「井戸替え」
長屋じゅうが寄って、井戸替えをする事になった。
長屋の隅にいる浪人も、出ないわけには行くまいと思いやってきた。
「身共もお手伝いをしましょう」 と言った。
浪人様は物の役に立たないで、結局邪魔になるばかりと思ったが、
断るわけにもいかず、
「では、あなたはここを受け持って頂きましょう。」 と、網の先をあてがう。
そして世話役が 「それ、引いたり」 と、号令をかけると、
浪人が四角くなって、
「しからば、皆さんお先へ」
小話を読んでいると、昔の、庶民の様子や、
あまり載せられないようなしものお話が元になったものが数々あります。
色めいたお話が多く、そうでない話を探す方が大変なくらい。
でも、それだけに、恋愛事情がわかったりと、
その時代に生きていた人たちに、かなり密着した話なのも事実です。
この話の場合、
武士が、庶民とは違う生活をしていたために、
長屋皆での作業も上手くできないし、
「引け」と言われれば、「下がる事」
「網を引く」のでは無く、「その場から、立ち去れ」と聞いてしまったんですね。
網を手にしながら、いつもの事と反応してしまう姿がおかしいのでしょうね。
ある意味、庶民が、武士を馬鹿にしていて、
笑い話の種になってしまったのかも。
そういえば、江戸小紋は武士の正装の裃の柄を町人が着流しに使ったことからの流行。昔から官僚は風刺の対象だったのですね。
そうだったのですか!私は、江戸小紋大好きなんです。 昔から、庶民は変わらないのですね。
あっはっは。 おもしろいよ、それ。
庶民は強し。ですね。いつの時代も。