「一声の 鶴賀に騒ぐ 籠の鳥」

これは、新内の流行に騒ぐ街の声をうたったものだそうです。
鶴賀とは新内流派の中の一つ。
「鶴賀新内」という太夫が売れて、有名になってしまい、
鶴賀節とはならず、新内が語ると言うことで「新内節」になったと言われています。(これは有名な話)

この川柳が暗示しているように、同じ豊後節系統でも、新内節の特徴は
「その曲調が最も感情を煽動(せんどう)し、腹を抉(えぐ)るような旋律を持っている点にある。
 そうなった理由の根本は、常磐津、清元等が歌舞伎と手を握って、舞踊の伴奏を主としたのに対し、
 新内節が花街での演奏に、生活根拠を求めたためであるとされている。
 名曲としては「蘭蝶ーらんちょうー」「明烏ーあけがらすー」「弥次喜多ーやじきたー」等。
 なお、義太夫の正本に節をつけた物で、名曲をかなり残している。」

また、渥美清太郎(私は初めて聞く名でした)は新内の特色について次のように述べている。
「新内の特色は、あの肺腑(はいふ)をえぐるような、極度に感情をあおる節まわしにあるのでしょう。
 限られた題材を守りながら、今も相当迎えられているのは、その中に大衆の気持ちをつかむ、
 あるものが存在していると思います。
 三味線も外の流儀とは随分弾き方が違っています。」

上記までの文章は「江戸音曲事典・小野武雄 編著」を参考にさせて頂きました。

この資料にもあるように、新内は「吉原」などでの「流し」が有名です。
以前も載せたのですが、「西の義太夫、東の新内」と言ったものなのだそうですが、
義太夫と兄妹なだけに、同じ曲が今でもいくつも残っています。
私はこの間、新内と義太夫のコラボも聴きに行きました。(詳しくは、書庫「コラボの話」で載せたいと思います)

新内は心中、悋気(りんき)などが有名です。
「極度に感情をあおる節まわし」とありますが、歌詞も他の邦楽に比べ、ストレートなものが多いです。

有名なのは「明烏」のくどき一説

「逢いたい見たいとしゃくり上げ 狂気の如く 心も乱れ
 涙の雨に 雪解けて 前後正体なかりけり」

降り積もっている雪が、とけてしまう程の涙を流してしゃくりあげ、狂気のさたの乱れ様。
前後の正体もわからなくなるほどに、、。

凄まじい感じが直に伝わる歌詞ですよね。

蘭蝶や、明烏は新派をご存知の方は聞いたことがあると思います。

三味線の音色も繊細で、どこか寂しい所があります。

大衆の心をつかんだ理由、それは「叶わぬ恋」や「三角関係の女房の気持ち」や、
「芸人の性、師弟との事」「芸者、馴染みの恋」 など、身近で馴染みやすく、そんな想いをしたことがある人たちが沢山いたからなのか。

でもある人はこう言いました
「新内に出てくる女性は、あくまで男性にとって都合がいいと言うか、良過ぎる女房なんかが多いです  ね。 あまりにも現代の女性からは考えられない存在だからそう思ってしまうのでしょうか。」

確かに、、でも、旦那と別れてくださんせ、、と談判に行く妻も描かれたりはしてるんですよ。

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